松島さんちの素敵な田舎暮らし 「first-hand」「ヒトトキ -人と木- 」「hibi」
掲載日:2021年10月19日(火)
美しい自然の中で、好きな人と気に入ったものに囲まれ、手を動かすことをいとわず、そこに幸せを見出す・・・そんな憧れの暮らしをここ稲武で実践している松島周平さん・知美さん夫婦。木の道具や家具を作り、カフェを営み、ゲストハウスも始めてしまった二人の思いや原動力は何か、その答えを求めて「ヒトトキ-人と木-」を訪れました。
一生モノの家具、優しい暮らし「first-hand」
こちらが、松島周平さん。
「first-hand」という自身の工房で、家具職人をしています。
大学を卒業後、海外や北海道で人生の周り道をしていた頃、お世話になった人に勧められ、北海道の職業訓練校で木工を学びました。
幼い頃から絵を描くことやモノづくりが大好きだった周平さん、人生とは不思議なものです。
そして、もうひとつ運命的な出会いがありました。
周平さんを指導してくれた教員のひとりが、将来の妻・知美さんだったのです。詳しい話は省略しますが、大方の予想を裏切るマンガチックな展開で結婚が決まり、周平さんの住む名古屋で新婚生活を始めることになりました。
このとき、二人が決めた家具のコンセプトは「一生モノの家具、優しい暮らし」。まず目先のこと、社会の最小単位である「家族を大切にする」ことに向き合う。そのために、より良い住まいや食を提供したい。
家具は、良質な国産材を使い、購入した人だけでなく、その子、孫へと、大切にする心とともに受け継がれてもらえるものを作りたい・・・。
ところが現実は、そんな理想の暮らしとはかけ離れた、都市でのアパート暮らし。生まれてくる子どものことも考えて、まずは自分たちの暮らしを見つめ直そうと新たな拠点を探し始めました。
そして、アパートを出る間際で辿り着いたのが稲武の地です。
やさしい家具とごはん「ヒトトキ ー人と木- 」
豊かな自然に恵まれた稲武での子育ては、まさに二人の理想とするものでした。
折に触れ、夫婦で将来はカフェをやりたいと話していたところ、理想の物件に出会います。知美さんは乳飲み子をおんぶして、空き家のオーナー(古橋会)に熱のこもったプレゼンを行いました。すると全面的な後押しを約束してくれることに。
こうして、夫婦の夢は突然大きく動き出したのです。
ちなみにヒトトキの床材は、オーナーである古橋源六郎さんの山から5本の木を選ばせてもらい「新月伐採」をした特別な木材を使用しています。新月伐採とは、「新月の夜に伐採し、天地を逆にして谷に寝かせて乾燥させることで、色つやが良く、丈夫で腐敗しにくい良質な木材をつくることが出来る」と言われています(世界最古の木造建築物・法隆寺や、バイオリンの名器・ストラディバリウスも新月伐採の木材が使われたとか)。この木を乾燥させ、内装を作り上げ、家具をしつらえ、時間をかけて丁寧に作り上げた「ヒトトキ -人と木-」は、まさに二人の家具作りへの姿勢を見るようです。
ヒトトキでは、知美さんが手掛けるカフェご飯も人気です。
長く体調を崩した時に、マクロビオティックや菜食、薬膳、自然食など様々な食事法を取り入れて回復した経験があり(今ではまったく想像つきませんが)、それが彼女の提供したい食事の基本となっています。
使っている食材や調味料は、その知識と経験を活かしてセレクトしたものですが、だからといってそれを声高にうたうようなことはありません。
彼女が大切にする、普段の食事の中の小さな思いやり。
ポリシーを押し付けない絶妙な知美さんの距離感は、どこか周平さんの家具にも共通するものがあるような気がします。
このインタビューでも、思い出や苦労した話など、色々なことを話してくれた周平さん。そんな話好きで愛嬌のある彼の姿からは、かけ離れているようにも思えますが、ここにある家具たちの繊細だけれど存在感のある、それでいて素直な佇まいは、まさに周平さんそのもの。
細やかなところまで、ちょうどいいおもてなしへのこだわりが詰まっていて魅力的なこの空間は、二人の人間性が作り出しているからこそ、訪れる人を優しく受け入れるのだと実感します。
ゆるりとした暮らし旅の拠点に「hibi」
松島夫婦は2021年、稲武遊びの拠点となる1日1組限定のゲストハウスを始めました。
歴史と自然と文化のあるこの地の魅力をじっくりと味わってもらおうという試みです。稲武の町を楽しんでほしいから、お風呂はホテル岡田屋やどんぐりの湯へ、夕食は街の飲食店をご案内。自転車をレンタルすれば、稲武周遊も思いのままです。
上階には、松島さん家族が住んでいるので、帰る頃には、きっと稲武はふるさとに、hibiはもう一つの実家になっていることでしょう。