はじめに
豊田市博物館企画展「教えて、千田先生!とよたの城も天下の城も」では、お城を読み解く知識を手に入れることができます。せっかく知識を手に入れたなら、次はその先にある現地へ足を踏み出してみたくなりますよね!
そこで、この企画展開催に合わせ山城に足を運んでいただくための企画「いざ出陣!とよた山城バス」がスタートしました。この企画は、豊田市内に165ある城の中から厳選した8つの城について、豊田市博物館を起点に公共交通機関では行きづらい最寄り駐車場まで送迎するものです。希望者には、おもてなしと地元名物のお土産品が付いた、地域の歴史を伝える地元のガイドの方による案内プログラムもあります。
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参加者を待つ出発前の山城バス。 -
お城へ向かう前の説明。ガイドさんも気合が入ります!!
戦国を感じる旅へ
4月29日(水祝)、この日から運行がスタートする「いざ出陣!とよた山城バス」の現地ガイドに同行しました。
目的地は、松平氏と武田氏の攻防があった大沼城(豊田市大沼町)です。この城は、堀切を挟んで東西の曲輪群で構成される一城別郭という、市内にあるお城の中でも珍しい構造をしています。
今回は、このお城と麓にある城主を務めた木村家の位牌が収められている洞樹院の見学、そして同日開催の下山地区の企業の魅力を再発見するお祭り・しもやま産業フェスタで五平餅をいただく行程約2時間です!
■現代の歩幅とは違う!?斜面の記憶
駐車場でバスを降り立った参加者19名は、麓の洞樹院で木村家の位牌の見学や振る舞いのおしるこを楽しみました。そして、大沼城へいざ出陣!登城口から一歩足を踏み入れてすぐに、ある「違和感」に気づきました。整備されている道の角度が、現代の階段のリズムとは明らかに異なっているように感じるのです。
一段踏み出すごとに、足に伝わるほどよい負荷。それは、効率や安全を優先する現代の道ではなく、攻め寄せる敵を阻止し、あるいは当時の装束で歩くための「戦国の歩幅」そのもののように捉えました。
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麓にある洞樹院に向かいます! -
歩き始めて10分!洞樹院に着きました -
洞樹院でふるまいのおしるこをいただきます -
麓に立つ大沼城の解説案内板
■空がひらける「生活の限界点」
足を進めていくと、木々に囲まれた山道を抜け、ふと視界が開けた瞬間がありました。そこにあったのは、二の丸や三の丸と呼ばれる平地(曲輪)。私たちが普段イメージする“城”の持つ天守閣も石垣はありません。そこにあったのは、広く、穏やかな空でした。
背の高い木々に遮られていた視界がパッとひらけるその場所は、かつて人間が険しい山を切り拓きながら、「ここからは自分たちの領域だ」と言わんばかりに線を引いた、いわば「生活の限界点」です。当時の人々がここに立ち、風を感じ、遠くの敵兵、あるいは家族の暮らす村を眺めていた……。そんな想像をしてしまいます。目に見える建物はなくても、光の入り方や空間の広がりから、かつての人々の営みの輪郭をぼんやりと描き出してくれます。参加された皆さんは、案内を聞きながら実際に足を踏みしめて、思い思いの発見と想像をしながら帰路についたと思います。
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いよいよ大沼城へ登ります! -
現在、三の丸。本丸までもう少し! -
本丸で解説を聞きます!
■知識を「線」で繋ぎ、五感で「面」にすることの大切さ
実は、この初の試みである「とよた山城バス」の運行、ありがたいことに多くの便がすでに予約で埋まるほどの反響をいただいています(最新情報はいこまいるとよたをチェック!)。
なぜ今、山城を目指すのか。それは、豊田市に点在する165もの城跡が、単なる裏山や高台ではなく、この街の成り立ちを今に伝える「生きた教科書」だからではないかと考えています。
博物館で学んだ「点」の知識を、山城バスという「線」で繋ぎ、現地の「面」で体感する。この一連の体験を通じて、地域の歴史を五感で味わってほしい――。そんな願いが、このバスには込められています。
おわりに
大沼城は、大規模な堀切や複数の曲輪群が見事に残る、千田先生も絶賛するお城です。歴史に詳しくなくても、その地面を踏み締め、空を見上げ、規模感や人々の営みを想像するだけでも十分満足できると思います。
天守閣のあるお城を「完成された映画」と例えるなら、山城は「行間を読み解く小説」だと思います。わずかな遺構しか残っていないからこそ、自分の想像力によって人々の動きや今はなき立体物の姿かたちを作り上げることで、400年前の景色を補完していくことができます。
今回予約が叶わなかった方も、いつかその足で現地の土を踏んでみてください。豊田の山々に散らばる城は、昔と変わらぬ姿で、いつでもあなたの「出陣」を待っていると思います。
【参考】豊田市博物館「教えて、千田先生!とよたの城も 天下の城も」図録(発行:2026年4月25日)
WRITERこの記事を書いた人
山田 拓実
愛知県生まれ。歴史が好きな30歳。豊田については、まだまだ勉強中。
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