豊田の酒蔵から始まる物語
「日本酒を飲む機会が減った。」
そんな話を耳にすることが増えました。
実際、日本酒の消費量は1973年から1977年頃にピークを迎え、その後は減少傾向にあります。
愛知県内でも1973年にはおよそ130あった酒蔵は、現在では40蔵弱にまで減ったと言われています。
そんな中、豊田市で100年以上酒造りを続けてきた酒蔵があります。
1923年(大正12年)創業の豊田酒造です。
今回お話を伺ったのは、五代目代表取締役社長の寺田さん。
取材を進める中で印象的だったのは、「日本酒を造ること」以上に、「日本酒を通して人と地域をつないでいきたい」という強い想いでした。
「地域のためにできることを」
2026年6月から、ひまわりネットワークでは新番組「知ってる豊田の知らない話 酒蔵ばなし とびきり燗」の放送が始まりました。
寺田さんは、この番組の「ご意見番」として出演しています。
実は以前、寺田さんは同局の人気番組「発掘バトル どらヤバイ店に行ってみりん」にも出演していました。
「番組を通して、お店同士や地域の人がつながっていくのが嬉しかったんです。」
その番組が終了した時には寂しさも感じたそうですが、「豊田酒造として地域のためにできることがあれば協力したい」という思いを伝えていたことが、新番組出演にもつながりました。
番組では、お酒を片手にゲストと語り合いながら、会社の歴史や商品誕生の裏話など、普段はなかなか聞くことのできない話が次々と飛び出します。
「見てくださる皆さんに楽しんでもらえる番組にしたい。」
そんな寺田さんの言葉からも、人とのつながりを大切にしている姿勢が伝わってきました。
「挙母」という名前に込めた想い
今年5月、イオンスタイル豊田店限定で販売が始まった日本酒「挙母」。
名前の由来を伺うと、寺田さんは迷うことなく答えてくださいました。
「地域の皆さんに飲んでもらいたかったからです。」
豊田酒造は創業当時、「挙母醸造」という名前でした。
創業から現在まで変わらず、この地で酒造りを続けています。
味わいは、日本酒好きの方にも満足していただけるよう少し辛口に。
さらに瓶の中には金粉が入っています。
これは、挙母祭りで舞う紙吹雪や、イオンスタイル豊田店のリニューアルオープンという"お祝い"をイメージしたもの。
ラベルには挙母祭りの山車など、地域を象徴するデザインも取り入れられています。
「夏の帰省や挙母祭りの時期にも楽しんでいただけたら。」
地域に寄り添った一本になっています。
日本酒を飲まない人とも、つながりたい
寺田さんのお話で印象的だったのは、「日本酒を飲む人」だけを見ていないことでした。
現在放送中のラジオ番組「栄一朗・香里の飲もうよ!日本酒!」では、日本酒だけでなく「酒粕パウダー」も紹介。
ヨーグルトやスープ、コーヒーなどに混ぜて気軽に楽しめる商品で、お酒を飲まない人にも酒蔵を知ってもらうきっかけになればと考えています。
また、寺田さんとつながりのある人をゲストに迎え、人と人との輪を広げています。
「日本酒を通して、人と人がつながっていけば。」
そんな言葉どおり、寺田さんの活動は酒蔵の中だけではなく、地域全体へと広がっています。
「豊田のために」
取材の最後に、「原動力は何ですか」とお聞きしました。
返ってきた答えは、とてもシンプルでした。
「豊田のために。」
その言葉の理由を尋ねると、寺田さんは幼い頃の思い出を話してくださいました。
幼少期に、おじいさんと一緒にスーパーへ日本酒を届けたり、名古屋へ販売に出かけたりしていたそうです。
一般の家庭がお正月の準備をする大晦日も、酒蔵にとっては一年で最も忙しい季節。
その光景が寺田さんにとっては特別なものではなく、"当たり前の日常"でした。
小さな頃から酒蔵が身近にあり、日本酒は生活の一部。
だからこそ今も、この場所で酒蔵を続けることは、自分自身の暮らしや地域の歴史を守ることと重なっています。
「できる限り、この酒蔵を守っていきたい。」
その想いは、地域限定の日本酒『挙母』や、新番組への出演、ラジオでの情報発信など、一つひとつの取り組みにもつながっています。
寺田さんが届けたいのは、日本酒だけではありません。
日本酒をきっかけに、人と人が出会い、豊田の魅力を知り、地域がもっと元気になること。
その願いが、「豊田のために」という一言に込められていました。
豊田酒造を訪ねてみませんか
豊田酒造では、事前相談により酒蔵見学にも対応しています。
また、豊田の名が付いた「豊田政宗」や、大吟醸・純米酒などは、お土産としても人気の商品です。
さらに7月には、どんぐりの里いなぶ限定販売の「うすべに」も登場予定。
日本酒好きの方はもちろん、「あまり飲んだことがない」という方にも、新しい出会いがあるかもしれません。
地域を思い、人を思い、一歩ずつつながりを広げてきた豊田酒造。
お酒の向こう側にある"人"に出会いに、足を運んでみてはいかがでしょうか。





