1.はじめに
豊田市博物館企画展「教えて、千田先生! とよたの城も天下の城も」の後期展示が、5月26日(火)から始まったと聞き、さっそく展示室へ向かいました。
前期展示から引き続き、豊田市内にある城について城郭考古学者・千田嘉博教授の解説で深く知ることができます。今回の入替で、展示している旧広島藩主浅野家に伝わる城絵図集「諸国古城之図」の中から、大給城や市場城、武節城といった豊田市ゆかりで人気の高い城の絵図が登場しました。また、織田信長や豊臣秀吉、徳川家康が描かれた「長篠合戦図屏風」を複製から実物に入れ替えたほか、寺部地区を治めた徳川家家臣の渡邉半蔵守綱ゆかりの品を観ることができるようになりました。
ここでは、いくつかの展示物についてご紹介したいと思います。
2.長篠合戦図屏風~戦国の一大ドラマをぜひ本物で!~
戦国時代好きなら皆さんご存知の長篠合戦。豊田市博物館には、合戦の様子を描いた「長篠合戦図屏風」の原本が所蔵されています。前期展示ではその複製が展示されていましたが、今回、待望の原本に入れ替わりました。
前期の展示も観覧していた私ですが、正直なところ、パッと見ただけでは何が違うのか分かりませんでした。そこで担当学芸員に話を伺うと、「複製とは色遣いが違うのです」と教えてくれました。
改めて全体を眺めると、金色の背景にドラマチックに描かれた大合戦ですが、一歩近づいて目を凝らしてみると、そこにはたくさんの要素が詰まっていることがわかります。例えば、馬防柵の向こう側で必死に身を隠す足軽たち、激しく駆ける騎馬。屏風に描かれた一人ひとりは豆粒ほどの大きさです。
しかし、そこに描かれる人々の表情や動きからは、当時の叫び声や馬のいななき、火縄銃の匂いまで漂ってきそうなほどの臨場感があります。教科書にある「織田・徳川軍vs武田軍」という構図が、確かに生きていた人間たちのドラマとして眼前に迫ってくるようです。この画面の密度は、いくら写真を拡大しても伝わらないと思います。実際の戦いから450年以上経った今なお、観る者を圧倒する本物だけが持つ説得力でした。
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長篠合戦図屛風 -
教科書で見覚えのあるシーン!
3.”槍の半蔵”を感じるリアリティ
もう一つのポイントが、なんと言っても豊田ゆかりの武将の品々です。徳川家康を支え“槍の半蔵”と恐れられた武将・渡邉半蔵守綱。1600年の関ケ原の戦いののちに寺部(豊田市寺部町)の領主となった彼が使用した品々たちが、異様なオーラを放って並んでいます。
まずは、印象的な「鉄黒漆塗十二間四方白筋兜」。ガラスケース越しにじっと見つめていると、美術品としての美しさ以上に、これが「実際に戦場をくぐり抜けてきた本物」という凄みが伝わってくるようです。
そして、その横に展示されている「大身の槍 広助」。こちらは、前期から展示されていますが、この長く重い槍を振るい、守綱は数々の修羅場を家康とともに戦い抜いたのだと思うと、思わず感嘆の声が漏れ出ます。展示室に掲げられた肖像画の中で静かに座る彼の姿と、目の前にある兜、槍、そして美しい蒔絵が施された鞍が頭の中で一つに結びついて、私なりの「渡邉守綱像」が立体的に出来上がっていくようです。
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鉄黒漆塗十二間四方白筋兜は圧巻です! -
渡邊半蔵守綱像は愛知県指定文化財です! -
「大身の槍 広助」の刃長はなんと75.5㎝! -
守綱所用と伝わる梨子地桜蒔絵鞍
4.おわりに
博物館の展示替えは、今しか出会えない歴史との「一期一会」だと思っています。この町には、かつてこんな城があって、このような形で今に残った、あるいは、こんな武将が呼吸をし、天下の命運を握る戦いへ赴いていた――。博物館の静寂の中で、自分の足元にある土地の歴史の深さに、ロマンを感じずにはいられません。
ただ知識を得るためではなく、この場所でしか味わえない瞬間を体験しに、ぜひ初夏の豊田市博物館へ足を運んでみてほしいです。きっと、皆さんと歴史や城との距離が、ぐっと近づくことと思います。
博物館企画展「教えて、千田先生! とよたの城も天下の城も」情報
WRITERこの記事を書いた人
山田 拓実
愛知県生まれ。歴史が好きな30歳。豊田については、まだまだ勉強中。
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